総論 ◆第33節 作法とヤング
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第33節 作法とヤング


  1. たとえば、欧米作法では、社交の場の中心は「家庭」となっている。日本も、住居水準が上昇するにしたがって、次第に、そうなって行こう。
    このとき、接待する家庭人の中で、責任を執り得、また、執らなければならないのは、「成年者」のみである。

  2. 言い替えると、息子、娘も、満20才に達するや、父親、母親とともに、または、父親、母親にかわって接待主役をつとめる。
    客としても、そのつもりで、これらの息子、娘を扱わなければならない。

  3. ところが、満20才に達していない息子、娘は、いかに、図体が大きくても、また、ませたことを言っても、子供として扱われる。

  4. さて、これが、職場となると、事情が一変する。ここには、「年令」というものがなくて、すべて、成人扱いである。働く者としても、15才以上がいる。
    客たる者が未成年者であっても、大人らしい能力を示している場合にかぎり、店の者は、これを大人として、扱わなければならない。

  5. これらを通じて眺めるとき、15才から、満19才までの者は、自分を、あるときは、大人として、あるときは、子供とするという使い分けが、要るわけで、かえって、本当の大人より、難しい。

  6. 次の話。まい年、新しい1クラスの中の5%前後の方は、作法嫌いであられる。
    「ボクは窮屈なことが嫌いなんで」と言われる。で、自分でもラフなスタイルと、ラフな言葉使いと、ラフな動作で押し切ろうとされる。また、人から丁寧にされるや「そうでござんすかね」と肩をはずされる。

  7. しかし、この傾向は、講義時に約半数の方々にうかがわれる。

  8. ところが、この方々は、自分が、現代風という1つの特殊な「型」の中に生きていることに気づいておられない。

  9. 大部分の日本のホテル・旅館も、現代日本風という「型」の中にあるからこそ、客との摩擦も少なく、やっていくことができている。

  10. ところで、本校は、民間外交官を育てようとする意思を持っている。

  11. さらに申せば、現代日本人の風を、少しでも、国際的な常識の裾に近づけようとする、矯風意思を持っている。

  12. そこで、わたくしという作法講師と新入生との間に、心理的摩擦を生ずるのは、やむを得ない。

  13. 諸君の中のいくばくかの方が作法を行なえば、人間味のあるつき合いができなくなると申されるのは、現代日本風を離れて、現代日本の中に生きていることの疎外感をうったえられるのであるから、もっともであるし、それを、あえて、作法的に振る舞えと申すわたくしもつらい。

  14. しかし、日本社会全体が、年々、わずかずつ、国際的常識の線に向かって、進んでいっていることを無視されてはならない。

総論
[エージェントマンに作法は要るか] [作法とは] [作法の目的の分解] [作法は自分のためならず]
[「われわれ」の伸縮] [「より外なるわれわれ」のために] [互恵主義] [作法は森羅万象のためのもの]
[品物を大切にせよ] [与えられた文明には心が乗りにくい] [ゴツイ人物のやり方]
[自分自身がどうしてよいか分らないとき] [どうしようか迷っている相手に対しては]
[作法的なつもりで無作法を行なう者をどうするか] [改まり方・くずし方] [作法とサービス]
[作法と生産性] [心と型] [動機論か結果論か] [媚と反媚] [作法と自然さ] [作法の流儀]
[統一型作法と並列型作法] [欧米との流儀の融和] [アメリカ作法を見誤るな] [一般と特殊]
[3種類の動作] [作法と体型] [作法と風習] [作法と大衆] [作法と女性] [異なるセックス意識]
[作法とヤング] [雑音を嫌う] [あとしまつの技術] [縮小化のわきまえ]
[そこまでやるのか。そこまでやるのである] [作法のために頭が痛くなれ] [教授法での注意]
[説明するな] [作法研修先での注意] [この本での対象作法の限定] [この本の編序] [用語の約束]
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