総論 ◆第11節 ゴツイ人物のやり方
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第11節 ゴツイ人物のやり方


  1. 作法という「型」を習うとき、ゴツイ人物は、こまることになる。

  2. で、ゴツイ人物は、作法の「型」を放棄しやすい。

  3. が、まったく、放棄しても、世の中を、まかり通り得ないことだけは知っている。
    で、自分で、学校のとは別の「型」を求めることになる。

  4. こういうゴツイ人物の悩みは、実のところ、わたくし自身の過去にあった。

  5. が、わたくしは、その過去、ある日、横綱と大関にお目にかかった。関取りは、裸体で、闘争するのが、職業である。
    が、その方々の礼儀作法の厳しさに打たれた。
    「ごっつあんでごわす」ではあったが。
    巨躯、こまかしい動作は、不可能であった。
    では、独特の作法の「型」をつくりあげておられるものであろうかと、観察していたが、まったく、普通の「型」を行なっておられた。
    その不器用さには、かえって、味があった。

  6. もう1人、こんどは、お名前を挙げる。ジャイアント馬場氏である。1970年前後に、列車の中で、巡業中のかれといっしょになった。2時間ばかり、食堂車で話していたのであるが、かれの礼儀正しさに、こちらが、参ってしまった。
    ここにも、独特な「型」はなかった。ふつうの作法の型を、忠実に行なっておられた。

  7. 関取りに、レスラーでは、特殊な例を挙げすぎたかも知れない。
    が、世に、多くのゴツイ人物がおられる。仕事の上で立派な人物というものは、ハンで押したように、ふつうの「型」の作法を行われる。または、行なおうと苦心しておられる。それが、人々に、はなはだ、好感を抱かせるものとなっておられる。

  8. で、わたくしは、諸君の中で「オレは、ワイルド・スタイルだけで、押し切って見せるぞ」と決めてかかっておられる方を無智としか見ない。

総論
[エージェントマンに作法は要るか] [作法とは] [作法の目的の分解] [作法は自分のためならず]
[「われわれ」の伸縮] [「より外なるわれわれ」のために] [互恵主義] [作法は森羅万象のためのもの]
[品物を大切にせよ] [与えられた文明には心が乗りにくい] [ゴツイ人物のやり方]
[自分自身がどうしてよいか分らないとき] [どうしようか迷っている相手に対しては]
[作法的なつもりで無作法を行なう者をどうするか] [改まり方・くずし方] [作法とサービス]
[作法と生産性] [心と型] [動機論か結果論か] [媚と反媚] [作法と自然さ] [作法の流儀]
[統一型作法と並列型作法] [欧米との流儀の融和] [アメリカ作法を見誤るな] [一般と特殊]
[3種類の動作] [作法と体型] [作法と風習] [作法と大衆] [作法と女性] [異なるセックス意識]
[作法とヤング] [雑音を嫌う] [あとしまつの技術] [縮小化のわきまえ]
[そこまでやるのか。そこまでやるのである] [作法のために頭が痛くなれ] [教授法での注意]
[説明するな] [作法研修先での注意] [この本での対象作法の限定] [この本の編序] [用語の約束]
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