第9節 レストランでの着席
【参考】テーブルの歴史
人は、神に奉る食べ物をのせる棚、つまり祭壇を、ずいぶん昔から、つくり、使っていたようである。
が、人として、ものを食べるのに、テーブルを使うようになったのは、ずいぶん、あとのようである。つまり、土の上に、食器をならべたし、あるいは、敷物を敷いて、その上に食器をならべた。
王が宗教儀式で食事するときも、大僧正の奉る盆の上から、とって、ひざまずいて、たべ、それが、ゆるんでも、イスに腰かけ、家来の奉る盆から食べ物をとって、食べたようである。
しかし、王のイスのかたわらには、盃を置く台、そうして、つまみものを置く台が設けられ、そこから、テーブルは始まったと見たい。
つぎに、王のみが、テーブルで食事をし、群臣が、その前で、床の上に、あぐらをかいて、食べていた時代が長い。
テーブルは、どうも、インドから、1つは中国に、1つは、西欧社会に伝わっていったものと見る。古代エジプトの壁画や出土品には、何ひとつ、テーブルがない。王のイスはあるが。
わたくしは、西欧社会が、テーブルの食事を持つようになったのは、アレクサンダー大王の東征(BC334〜324)によって、ペルシアから、それを受けたとする1つの仮説をたてて見ている。
が、これが、キリスト時代になると、もう、かなり普及していた。
【通解】
- テーブルでの1人分の横巾は「皿3枚分」といって、65〜75cmのものである。
- そこで、肱を張ると、隣の人に、ぶつかる。
- なぜ、このように窮屈にするのかということ。隣との小声での会話を容易にするためである。
- そこで、この窮屈さに合わせて、ナイフ・フォークの持ち方など、テーブル・マナーができ上がっている。
【型1】ウェーターは正客席のイスを引くもの
- こちらが、2名以上で客として、テーブルに進んでいったとき、ウェーターが、イスを引いてくれたならば、それは、その席が、そのテーブルでの正客席であるぞという信号である。
- それを、こちらが、その引かれたイスの最寄りの人物のために行われたサービスと誤認しないこと。よく、日本人は、そういうことの結果、子供とか、お伴とかが、正客席に座ってしまうこととなる。
- そこで、レストランに入るとき、誰が正客席につくべきか、あいまいな人間関係のとき、誰をそれにするという約束を決めてから入って行くことである。
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- 食堂などでイスが足りない場合、ウェーターを呼び、持ってきてもらうこと。
- イスなどを他のテーブルから取るとき、必ず、座っている客に了解を求めること。
- 灰皿は、持ってきてはならない。
- 客として、持ってきたイスは、こちらが発つとき、もとのところへ返しにゆくこと。
【型2】なににつけ、ありがとうと言え
ウェーターがイスを引いてくれ、また、押してくれたとき、「ありがとう。thank you 」と申さない者は、国際的に見て、教養が足りない。
【型3】男子は女子のイスを引け
- ウェーターの来ないとき、または、ウェーターの手の足りないとき、女子のためには、その女子の左側の男子が、その女子のイスを引いて座らせられよ。
- その女性の左側に男子のいないとき、その右側の男子が、それを行ないに行かれよ。このような場合、男子は、まず、自分の右側の女性を座らせ、それから、左側の女性を座らせるということになる場合も多い。
- 立っている女性としては、男子がイスを引いてくれるまで、グズグズと立っていることが作法となる。このとき、イスの左うしろで1mぐらい離れたところに立っていれば、つつましやかに見える。
- 立って待っている女子に対し、男子が誰もイスを引いてくれないとき、その女子は、なに気なく、自分でイスを引いて、座られよ。
- 男子としては、全女性が座るまで、めいめい、まだ、座らないでいるということ。
- 男性Aは、右に座っている女性1、2のイスを引く。このときのイスを引く順序は、お年を召している方のイスから引く。もし、2に座っているほうが、お年を召していた
なら、2→1の順に引く。男性Bは、Aが1または2のイスを引くのと同時に、3の女性のイスを引く。
- また、正餐のときは、ふつう主催者側が、身分で席順を決める。しかし、宴会でなく個人の場合は、外見で判断して席順を決める。
【型4】イスは左から腰掛けよ
- イスは、左から座り、立つときも左に立つ。
- それを可能にしないイスのときは、別。
- 左側に壁がある場合など、左から座る事はできない。だから、順番に、左側から座っていくこともできない。
【型5】座ったときの形
かかとをうしろに、腰起こし、肩力抜き、後頭天*で座られよ。
これが、洋食作法中、もっとも、大切なこと。
足の付け根の関節を蝶番として、正座した上体を、そのまま、前にたおしたり、起こしたりする練習をされよ。あごが前に出ないように。これが皿の上に首を出すときの姿勢である。
第5章第10節【型1】「正座」を開きます。
【説明】
- ものを食べるときにも、2つの姿勢がある。
- その1つは、うずくまり、舌づつみを打ちながら、食べることであって、すこぶる、うまい。
- もう1つは、正座して、やや、上体を、前倒しただけで、食べることであって、食べ物の魂に触れることができる。あいまいでなく、この両方を、使い分けられよ。
- 姿勢を正して、食べ物を食べるとき、イスには、深く、腰かけられよ。
ところが、そのイスを、テーブルのほうに、引き寄せられない状態のこともあり、それにかかわらず、姿勢を正して、食べなければならないこともある。
こういうとき、どうするか。
- イスに深く腰かけ、猫背になって、食べるか。
- イスに浅く腰かけ、姿勢を正して、食べるか。
答は、後者である。
- 冗談を飛ばしながらも、この腰の姿勢が崩れないように。
- うしろからのスピーチを聴くときは、腰を起こしたまま、上体をひねって聴くこと。
【型6】机との間は、こぶし1つ半握り
- ナイフ、フォークの並べられている、こちらの端から食卓のフチまでの距離が2〜3cmのときは、この食卓についたとき、自分の胸と食卓のフチとの間隙を、自分のこぶし1つ半ぐらいとされよ。
- 儀式がかった宴会のとき、このナイフ、フォークと食卓のフチとの間が、5cm以上あることがある。古式のスタイルであるが、このときは、自分の胸と食卓のフチとの間隙を、自分のこぶし1つとされよ。おのずから、終始、姿勢をよくしていなければならない。
【型7】イスを押してもらうとき
- ウェーターや仲間がイスを押してくれるとき、腰かける自分自身も、イスを引いて、イスと身体のなじみを自分でつけられよ。
- 座ってみて、これが、うまくいってないとき、約10秒までは、イスをいくばく、ずらして、必ず、この寸法にされること。
なるべく、座る一挙動で、これができるよう、練習を重ねられることである。
- この約10秒以後、イスの位置をなおしたいときは、そっと、なおされよ。
【型8】食卓についたときの足の形
- 食卓で、足を組んでよいのは、スナックかカフェテリアで、それも、お茶かお酒を飲むときだけである。
- 食卓での足の形は、男女とも、いくばく、開いていること。そうしないと、腰を起こしているのが、つらくなる。
【型9】食卓についたときの品物の置き場
- ハンドバッグを携帯する方は、つとめて、ハンドバッグ・ハンガーをも、携帯されよ。
- しかし、ハンドバッグ・ハンガーを忘れられたとき、または、テーブルが厚くて、ハンドバッグ・ハンガーを使えないとき、ハンドバッグの外底は、汚いものであるから、ハンドバッグを食卓に置かれるな。
- 携帯品を置く正規の位置は、小さい物のとき、膝の上、やや大きい物は、イスの左下である。
- しかし、ウェーターが足に引っかけそうであると思われれば、自分の足の前に置かれよ。どうせ、足を投げ出さない以上、これでよい。
- しかし、床面に油などがあると見るときは、ハンドバッグなどを、イスの背と腰との間に置かれよ。こうすると、イスに深く腰かけられなくなるが、我慢しているということ
である。
- 男女とも、新聞、雑誌、図書などは、ハンドバッグと同じ位置に置かれよ。
- 肩掛けのハンドバッグでも、イスの肩に、引っかけておくことをされるな。
- 女子は、正式の場において、イブニング・バッグ(小型)、手袋、扇子を持っている。ところが、絹のようにすべりやすい服装では、膝の上に載せられない。
で、このとき、ナプキン(正式のナプキンは大きい)を広げ、斜めに折って、その下にバッグなどを入れ、ナプキンの左右の端を、膝の下に折り込むと、物が落ちにくくなる。さらに、足はそろえて、膝が平になるよう、また、足のかかとを、やや、うしろに引いて座ること。
- ナプキン使用前 (真上図)
- ナプキンをかぶせる (真上図)
- 着席の際に、ハンドバッグは、人と人との間が85cmあいているときに、椅子の左側に置いてよい。85cmないときには、足の下に入れる。
- カメラを所持した場合は、どうするか。
- 元来、食卓にカメラなどを持参すべきものではなく、もし、持参する場合は、食事をしない人物として参加すべきである。
- けれども、そこを崩して、食卓にカメラを持ちこむというときには、まず、カメラをイスの背に掛けることのできる場合は掛ける。
- そうでない場合は、食卓の上に載せる。そのときは、自分の食膳の右前に置くことになろう。
- たまたま、聖書は、食卓に載せることができる。そのときは、食膳の右側に置くのが普通であるから、カメラも同様と考えたい。
- また、聖書と写真機を同時に所持した場合は、聖書の上に重ねて置く。あるいは、並べて置けばよろしかろう。
【型10】食卓での手の置き方
- ヨーロッパ流では、テーブルの上に、少なくも、片手、できれば、両手を載せておられよ。
- その手は、左右分離しておろうが、組んでおられようが、どうでもよい。
- 標準型は、左右、肩の前で、西洋式コブシを握っていること。
- けっして、肱を、テーブルの上に載せられないように。
- フランスなどに、わざと、肱をテーブルに載せて、くつろぐ習慣もあらわれてきているが、すすめない。
- アメリカ流では、両手を膝の上に置かれよ。
【説明】
- この由縁は、簡単なものであって、ヨーロッパでは、長年月、素手で、食べ物を食べていたから、食前に洗ってきた手を、食べ物以外のもので汚さないためであり、いまひとつには、テーブルの下で、そっと、刀を抜いたりしないことを示すためであったと言う。いずれにせよ、ヨーロッパ作法は、そのわけを洗ってみると、東洋作法に比べて、野蛮なものが多い。
- アメリカ作法は、アメリカ陸軍士官学校作法が基準となっているが、これが、第2次大戦後、改訂され、食卓でも、用のないときは、両手を膝の上に置くようにされ、これは、多分に、日本などの作法を取り入れたものと言える。これが、全米にひろがっている。
- われわれは、ヨーロッパに行ったときのみ、ヨーロッパ流にいたせば、よろしかろう。
【型11】上着を脱いで食事をするときの注意
- 食事のときは、どのように気温が高くても、上着を脱いではならない。
- しかし、先方から「上着を、おとりください」と言われて、一同で脱ぐことはある。
- この上着を脱いだとき、ワイシャツの腕まくりが出てくると、はなはだ、失礼ということになっている。そこで、上着をとる場合がありそうなときは、あらかじめ、ワイシャツの袖を長くしておかなければならない。ズボン吊りが出れば、もっと失礼。
【型12】食卓での文書の取り扱い
- 食卓で、メモをとることは、ゆるされる。
- 食卓で、ハガキや手紙を書かれるな。
- いわんや、食卓で、新聞、雑誌、図書などを読まれるな。
【型13】高貴な方を待つ形
高貴な方との会食では、つぎの3種類の待ち方がある。
さて、えらい方がおいでになった。
- みんなは、テーブルから引き出しているイスの背に密着して立つ。
このとき、右手を椅子の背に載せる流儀と載せない流儀があるが、現代は載せないほうがよい。
- みんな、イスに腰掛けて待つ。
しかし、代表者1名だけが、A. のように椅子の背に立つ。
- 全員が腰掛けて待つ。
第7章 飲食・喫煙