第7章 飲食・喫煙 ◆第15節 ウェーターとの応対
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第15節 ウェーターとの応対

【通解】幹と葉
【型1】ウェーターの呼び方
【型2】プリーズという言葉の大切さ
【説明】
【型3】料理の注文の仕方
【型4】料理待ちの作法
【型5】ウェーターにムダな話をするな
【型6】ウェーターのサーブに対して身体をねじれ
【型7】飲み物の注がれ方
【型8】食べ方を聞く
【型9】ウェーターを叱るな
【型10】ウェーターへのチップ
【型11】ウェーター外へのチップ


【通解】幹と葉
  1. レストランにあって、ウェーターは、ものを言わないが「幹」。
    客は、にぎやかであるが、「葉」。
    この立場を、はっきりと、頭に入れておかれよ。

  2. レストラン・ウェーターの立場は、1600年代と1900年代で異なっている。
    あたかも1600年代にあって、楽士が、王宮の片すみにいる装飾品であったのが、1900年代にあって、聴衆に、沈黙を強いる芸術家と変化しているようなものである。
    日本では、ウェーターに対する見方が、この点、まだ、後進的である。
【型1】ウェーターの呼び方
  1. 洋食では、客とウェーターとは、対等のもの。
    ウェーターは、客の従僕なのでない。
    ウェーターが、客に丁寧にするのは、客がウェーターに、丁寧にするときに限る。

  2. 向こうにいるウェーターに来てもらいたいとき、そのウェーターと反対側の手を挙げられよ。
    その手は、そのウェーターの側まで、出してよい。
    手のひらをそのウェーターに向けられよ。

  3. ウェーターが、気が付くまで、3分間は、そうしておられよ。
    つぎに、3分間、休んで、また、3分間、手を挙げておられよ。こうして、3回、手をあげても来てもらえないとき、静かに席を立ち、支配人か代表的なウェーターのそばに行き、にこにこしながら、「 Waiter please! 」( Service please!)「ウェーターをこちらによこしてもらえないだろうか」を言うことである。

  4. 近辺にいるが、こちらを向かないウェーターを呼ぶことばは、日本では、「お願いします」、イギリス、アメリカでは「Waiter please!」、ヨーロッパ大陸では「Service please!」という英語、または、同じ意味の独、仏、西、伊などの言葉となる。
    けっして、大声を出さないこと。

  5. 1930年代ぐらいまでは、欧米でも、日本でも、ナイフの柄じりで、こつこつとテーブルをたたきサインすることが行われたものであるが、現在は、この風習を野蛮と見ている。
【型2】プリーズという言葉の大切さ
  1. Please(仏 シルヴ・プレ、独 ビッテ)を付けないと、「オイ、……をくれ」と言っていることになる。

  2. Thank you(仏 メルスィー、独 ダンケ)を言わないと、「フン、勝手に置いて行きやがれ」と言っていることになる。
【説明】
  1. われわれは、英語の習いはじめから、Please を「どうぞ……してください」と習ってきた。たしかに、そうなのであるが、もし、Please をつけないとき、「……を下さい」にならずに、「オイ、……をくれ」になっていることを、案外に知っていない。
    文明・文化につき学ぶ点がなければ、われわれは、けっして、欧米語を学ぶ必要がない。つまり、日本語に比べ、欧米語は、ことばとして、まことに未熟なものである。
    で、Please を大げさに言えば、「どうぞ、……をしてください」となり、Please をあっさり言えば、「……してください」となる。Please を落とされるな。

  2. 同じく、なにかしてもらったとき、thank you を言っても、せいぜい、日本語での、「やあ、どうも」くらいにしか、あたっていない。「やあ、ありがとう」にあたること ばは、thank you very much(仏 メルスィー・ボクー、独 フィーリン・ダンケまたはダンケ・シェーン)である。「ほんとうにありがとうございました」というためには、「Thank you very much for your kindness」となる。

  3. で、ビフテキの焼き加減ならば、「Medium please 」、水を下さいならば「Water please」、ウェーターが料理を持って来たときも「Thank you very much」である。
【型3】料理の注文の仕方
  1. 注文(オーダー)を、スマートに行なうのは、西洋料理でのシロウトである。
    では、ただ、しつこければよいかというと、とんでもない。

  2. 客たる者、多くの場合に、自分が、なにを食べたいか、飲みたいか、頭の中で、はっきりしていないのが自然である。

  3. こちらが着席するやメニューを出される。しかし、日本でも欧米でも、粗末なところにゆけば、いきなり、「なににいたします?」とやられる。しかし、壁に、一覧表で貼ってあるようなところをのぞいて、メニューを持っていないレストランはない。 で、「Haven't you a menu?」と聞けば、オヤソーカイとばかり、持って来てくれる。
    そこで、メニューを見て、まず、自分のほしいものを、頭の中に、はっきりさせるということになる。

  4. ところが、そのメニューを見ても、わからないことが多い。

    1. まず、メニューの編集がわからない。で、聞くこと。

    2. つぎに、個々の料理が、どんなものかわからない。で、聞くこと。もし、ウェーターが、メニューの中のものについて、わからないというとき、「聞いてきていただけませんか」と言うべきである。そのウェーターの勉強を手伝うことになる。客としてのサービス。

    3. だいたい、食べ物が固まってきて、その値段の書いていないとき、そっと、その値段を聞くこと。(平気で、メモ用紙を出して、筆談してよい)

    4. 飲み物についても、同じようにすること。ワインなどは、メニューが別綴になっているもの。


  5. デザートは、通常、あとで、注文するものである。

  6. で、何がほしいか、よく、こちらの頭の中が固まるまで、ウェーターを、質問攻めにすべきものである。ことばは、丁寧に。

  7. こちらの仲間のオーダーも、代表して発しなければならないとき、仲間の希望を、こちらとして、よく、聞かなければならない。

  8. もしアメリカであれば、メニューの中で、いちばん値段の高いものを注文せよ、ということばがある。わたくしの経験では、7〜8割かた、あたっているように思う。アメリカでの伝統的なレストラン・ポリシーであって、客も、それを常識としているということのようである。しかし、アメリカでも、ほんとうに高級なレストランにゆくと、こういうことはない。ヨーロッパでは、メニューの中のなにを食べても、それぞれに、味のうえに力を入れている。

  9. メニューを見て分からないとき、「きょうの特別料理は? What do you recommend today? または What's your recommendation today?」と聞かれよ。

  10. メニューのなかで、Supplement と書いてある部分は、おかわりをいくらでもできる部分である。つまり、安くて腹一杯になれる。

  11. すっかり、注文予定が固まってから、オーダーを出す。
    大声にならないよう。しかし、ことばを、はっきりと。料理の出る順を追って。

  12. このとき、ウェーターから、逆に質問を受けることになる。朝食ならば、ジュースは何にするか、たまごは、ボイルド・エッグにするか、スクランブルにするか、ハム・エッグにするか、ベーコン・エッグにするか、ボイルド・エッグならば、何分間のものに するか、食後は、紅茶かコーヒーかといったことである。昼食・夕食ならば、サラダのドレッシングはなににするか、ビフテキの焼き加減はレアか、ミディアムか、ウェルダンかといったことである。

  13. 最後に、ウェーターが、復唱しないとき、「ちょっと、おっしゃってみていただけませんか。Please make sure these orders 」ということ。

  14. いちばん、最後に、こちらとして、必ず、「お願いします。Thank you 」と言うこと。
【型4】料理待ちの作法
  1. オーダーを終わった時刻をメモされよ。
    昼食(スープ、ア・ラ・カルト、ティー)の場合のオーダー後の待たされ時間を知って おかれよ。
  日本  アメリカ  ヨーロッパ
待ち時間10分 待ち時間15分 待ち時間25分
食べ時間20分 食べ時間30分 食べ時間35分
合計時間30分 合計時間45分 合計時間60分
  1. そこで、日本で20分、アメリカで30分、ヨーロッパで、50分経って、料理が出始めないとき、文句を言われよ。オーダーが通っていない懸念がある。

  2. この文句を言って5分以内に、料理の出ないとき、席を立って帰られてもよい。
    料理が遅れたからといって、客が損害賠償を請求できないのが、レストランというもの。
    こちらが帰ろうとするとき、料理が出て来ても、こちらは「 I have no time to take this dish 」である。
    もとより、カネなど払わない。

  3. マネジャーに文句をいうとき。

    1. まず、握手をされよ。
    2. 次に挨拶されよ。
    3. 自分の名前を言われよ。
    4. 「おたくの店は、おいしいので有名である」と言われよ。
    5. 「われわれは、それで来たのだ」と言われよ。
    6. 「が、残念なことを申し上げなければならない」と言われよ。
    7. 「めしが30分待って出なかった」と言われよ。
    8. その事情を言われよ。
    9. 「ご配慮を願う」と言われよ。
    10. 「ありがとうございます」と言われよ。
【型5】ウェーターにムダな話をするな
  1. ウェーターの動きが、ドタバタ目立つようなレストランは、商売がうまいとしても、上質のレストランでない。
    むしろ、ウェーターの動きがにぶく、静かなレストランこそ、上質である。
    で、客から見ると、上質のレストランのウェーターは、いつも、遊んでいるように見える。(本当に遊んでいることが、まあ、あるが)
    で、客の心理として、何か、さびしいので、ウェーターに、話しかけたくなる。

  2. ところが、ウェーターは、動きを静かにしていても、頭と目は、フル稼働しているものである。

  3. で、客として、ウェーターに、よけいなことを言わないようにするのが、ウェーターに対する作法となる。
    話しかければ、ウェーターとして、スマイルのうちに応対はしてくれる。が、それは、ウェーターにとって、ヘビー・ワークなのである。
【型6】ウェーターのサーブに対して身体をねじれ
【型7】飲み物の注がれ方
  1. 飲み物は、水にせよ、ジュースにせよ、酒にせよ、右側から注がれる。(スープは、食べ物であって、飲み物でないというのは、元来、ウェーター教育のときのことばであって、客の左側から、サービスせよということ)

  2. 飲み物のサーブを受けるとき、必ず、コップを卓上に置き、コップから、手を離していること。
【型8】食べ方を聞く
  1. 食べ方のはっきりしない料理が出てきたとき、そこのホストに、その食べ方を聞くのが、西洋作法である。
    「なんと、めずらしい料理であろう。いったい、どうやって、食べるのであろう」  「これは、こうして、召し上がってください」こういう対話が、うるわしいものとされる習慣である。東洋と、かなり違う。

  2. で、そのホストのいないとき、ウェーターに聞くのが、同じく作法となっている。

  3. ああか、こうか、思案して、自己流で食べるのは、たいへん、失礼ということ。

  4. ただ、みんなには、わかっていて、自分だけ、その食べ方を知らないこともある。で、そういうときも、隣席の人に聞くより、ウェーターに聞くことなのである。

  5. けっして、自己流で、食べないこと。
    たとえば、外人が、日本に来て、天ぷらと、タレと、大根おろしを、見て、タレを、ぐっと呑み、大根おろしを呑みこみ、天ぷらをかじって、「うまい」とお世辞を言ったならば、こちらが、がっかりする。「食べ方を教えてほしい」というほうが感じがよい。
    それと同じである。
【型9】ウェーターを叱るな
【型10】ウェーターへのチップ
  1. ウェーターへのチップは、通常、料飲代(サービス料、税金を別にして)の15%程度が標準である。

  2. が、たとえば、ビールなど、値段にならないものを、繰り返して、運ばせたとき、最高40%ぐらいまでにおいて、増額を考慮されよ。

    1. 帰り際にウェーターに「Thank you」といって握手するときに、その手の中にチップを持ち、外から見えないように、なにげなく渡す。

    2. 「On the table」の方法として、卓上の灰皿などの下に置くこともある。チップは置いたのち、知らん顔をして立って行くのがマナーである。普通にチップを出すときは、公然と手渡されよ。
【型11】ウェーター外へのチップ

第7章 飲食・喫煙
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