第7章 飲食・喫煙 ◆第26節 温野菜
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第26節 温野菜

【参考】legumes
【型1】レギュームは取らなくてもよい
【型2】じゃがいもの食べ方
【説明】
【参考】じゃがいも
【型3】豆の食べ方
【参考】マカロニ・スパゲッティなど
【型4】スパゲティの食べ方
【参考】とうもろこし
【型5】とうもろこしの食べ方
【型6】パセリの食べ方


【参考】légumes
  1. légumes レギューム。野菜。
    それから、とくに、豆類のこと。

  2. légumes は、なまで食べるとき、だいたい、salade サラドと呼び、煮たり、いためたり、蒸したりして食べるとき、また、légumes と呼ぶ。(Salade でも、野菜を、ゆでたりしたものであることもある)

  3. 温野菜(おんやさい)は、肉や魚の garniture とすることもあり、一品料理にすることもある。が、魚料理につける garniture ポテ卜は、料理が嫌いだからといって、ポテトだけ取ることはできない。
【型1】レギュームは取らなくてもよい
  1. つけ合わせの野菜は、プラッターから、ほしいものだけを、取ればよい。

  2. すべて、嫌いならば、肉だけにして、まったく、取らなくてもよい。

  3. 反対に、肉が重いとあって、野菜だけを取っておくこともゆるされる。

  4. 肉類と野菜などを1皿に取るようにしてある料理の妙味は、こんなところにある。 その妙味を、生かされることである。

  5. もとより、両方、欲しいときは、両方、取られよ。

  6. ウェーターに取ってもらうときも、「これと、これをお願いします」と指示してよい。
【型2】じゃがいもの食べ方

長径5cm以下のじゃがいもは、ナイフでなく、フォークで切られよ。これを、ドイツでのみ、そうすると書いた本があるが違う。

【説明】

これは、1600年代から、ヨーロッパにじゃがいもの栽培が広がり始め、パンにつぐ主食とされ、それを、フォークのみで食べてきた習慣が残っているものと思われる。パンを、 ナイフで切らないように、じゃがいもも、ナイフで切らないということかも知れない。

【参考】じゃがいも

1540年、南米のキトーから、スペインヘ、はじめてジャガイモが伝えられた。ヨーロッパ人がジャガイモを見た最初である。
1760年ごろ、プロシアのフリードリヒ大王は、冷害凶作を切り抜けるため、全ドイツ中に、ジャガイモをつくることを命じた。これは、自作農創設政策の一環でもあった。大王は、小作人の存在を嫌った。こういう事実は、偏向を示す近来の歴史書を学んでいても、わからぬところである。
事来、ジャガイモは、パンと並んだドイツの主食となり、ここから、多くのジャガイモ料理が生まれてきた。

【型3】豆の食べ方

アメリカ人は、しばしば、豆をフォークで潰してから、同じフォークですくって食べる。ヨーロッパ人は、潰さずに、そのまま、すくって食べる。東洋人の場合、アメリカに行ったときでも、ヨーロッパに行ったときでも、どちらのやり方を用いてもよろしかろう。このと き、フォークをスプーンのように持って豆をすくって食べられること。

【参考】マカロニ・スパゲッティなど
  1. 1295年、マルコ・ポーロが、元(げん)の国から帰って、イタリアに、中国の「うどん」の作り方を伝えた。(加藤祥先生)

  2. で、マカロニ、スパゲッティ、バーミセリは、1310年前後、ナポリ王国の宮廷で、つくり、食べ始めた。つまり、まだ、670年の歴史しかない。

  3. イタリアに行くと、よく、オードーブルの出るはずのところで、マカロニやスパゲッティが一山、どさっと出され、面喰らう。また、そのあと、スープが省略されたりすることもある。あるいは、オードーブルとかスープとかいうところを、マカロニ、スパゲッティでやってしまうのが、イタリアの一般の食べ方なのかも知れない。

  4. AD300〜700年ごろのギリシア語で、makaria は、大麦のスープ。これと関係がありはしないかという説もある。1300年代のラテン語で、maccherrone または maccarone は「ムギ」。その複数形が maccheroni または maccaroni 。現代イタリア語では、macaroni である。

  5. マカロニとは「お麦麦」といっているようなもの。

  6. Spaghetti は、マカロニより、少しあとで生まれたらしい。1300年代のラテン語で、spargo は、細長いものでバラ撒かれているもの。spargetto で、そういうものの小さなもの。その複数形で、spargetti 。これが、現在イタリア語では、spaghetti となっている。「おバラ」。

  7. vermicelli は、スパゲッティより、あとで生まれた。vermi は英語では worm(虫)。cello は little(小さい)。celli で複数になる。スパゲッティのもっと細いものであるから、これは「お小虫」。

  8. イタリアの麦は、日本の麦と同じで、パンよりはうどんにむいている。で、これらの食べ物は、実際に、食べてみて、美味かったから、ヒットした。

  9. こん日では、ご承知のとおり、ナポリタン(ナポリ風)、ボロネーゼ(ボローニァ風)、ミネラーゼ(ミラノ風)と、料理の仕方にバラエティもできている。

  10. 南フランスでは、どうやら、このイタリア麦に近い麦がつくれるので、ここでも、マカロニ発明後、うどんをやってみた。「ヌユ」である。が、やはり、麦のねばりがなくなるので、せいぜい、きしめん状にしかできない。そのかわり、腰のしっかりした風味は出ている。
【型4】スパゲティの食べ方 図:147
  1. スパゲティは、食事コースとしては、スープの位置に当たる。
    左手で、デザート・スプーンを皿に垂直に壁のように立てる。フォークに、少し、すくったのを、スプーンに突き当てて、クルクルまわし、このフォークに巻きついたスパゲティを食べる。

  2. 上手になると、スプーンは要らなくなる。

  3. が、イタリア人でない欧米人には、このようなことは、なかなか、できないし、多くは、コース中の、温野菜の一部として扱われていて、スプーンもない。そこで、これを、ナイフ、フォークで食べるということになると、厄介なことである。

  4. まず、マカロニ、スパゲッティの山に、水平にしたフォークを刺し込み、これを持ち上げ、垂れさがった分を、ナイフで、フォークに巻きつけ、このとき、あまり、長く、下に残っている分をナイフで切り、そうやって、フォークから、マカロニ、スパゲッティが、ずり落ちてこないうちに、あんぐり、口にほうり込むというのが、一般形である。 が、これで、やれるのは、はじめの2刺し、3刺しであろう。

  5. そのあとの分の処理法であるが、結局、いんげん豆ぐらいの棒に切って、それを材木のように並べ、フォークですくって、口に持ってゆくということになる。しかし、これ すら、練習しないと、空中で、フォークから、ずり落ちる。

  6. が、こうしてまで、マカロニ、スパゲッティを食べても、美味でない。わたくしなどは、めんどうになってきたところで、やめて、あと、ただ、かき集めておく。
【参考】とうもろこし

とうもろこしは、BC1500年〜1400年に、中米で栽培が始められたもの。AD680年代に、マヤ王国の主食になっていた記録がある。その後、スペイン人が、ヨーロッパにもたらした。が、コーン・スターチ、コーン・スープといった展開を示すのは、イギリス系アメリカ人たちである。

1492年
コロンブス、アメリカ発見。
1562年
フランスでユグノー戦争がおこり、新教徒ユグノーたちが、南カロライナに移行。
1583年
イギリス人ギルバートが、ニューファウンドランドを探険。
1603年
フランス人シャンプランがセント・ローレンス川を探険。カナダを開拓開始。
16O7年
イギリスが、ジェームズ・タウン建設。
16O8年
シャンプランがケベック市を建設。
1619年
ジェームズ・タウンにアメリカ最初の議会成立。
162O年
イギリス清教徒ピルグリム・ファーザーズが、メイ・フラワー号でプリマスに上陸。
1630年
イギリス人がマサチューセッツに大移行。
1634年
イギリスがメリーランドに植民地を建設。
1635年
イギリスがコネティカットに植民地を建設。
1652〜54年
第一次英蘭戦争。
1665〜67年
第二次英蘭戦争。イギリスが勝ち、アメリカのオランダ植民地ニュー・アムステルダムを奪い、ニューヨークと改称。
1672〜74年
第三次英蘭戦争。全オランダ植民地をイギリスが奪る。

だいたい、この1600年代に、主としてイギリス人の手によって、アメリカで、とうもろこし料理ができ上った。

【型5】とうもろこしの食べ方

コーン(とうもろこし)は、日本でと同じに、両手で持って、食べられよ。
このとき、バタ・塩(ときに胡椒)を皿の手前の部分に取っておき、コーンを、これらに、つけては食べられよ。まあ、塩を、コーンの棒にふりかけ、バタを、バタ・スプレッダーで、こすりつけても、ひどく不作法とは、見られない。

【型6】パセリの食べ方
  1. 温野菜でないが、パセリは、飾り物でなく、食べるものである。略式の場では、塩をかけてもよい。ただ、これも、2立方cmを超えると見たときは、ナイフで切って、食べられよ。

  2. ただ、日本の大衆レストランでは、パセリを飾り物として、なん度も使っていることがあるので、そう見てとったときは、ただ眺めておかれよ。

第7章 飲食・喫煙
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