第4章 美容と服装 ◆第5節 顔と手 |
石けんの歴史を眺めておこう。
BC470年ごろというと、ソクラテスの生まれたころ。
アテネで、ドロドロした石けんを使って入浴する習慣が生じた。
これは、油と石灰をまぜたものであった。
つぎは、AD130年ごろ、ガリア人(いまのフランス人)が、固形石けんを発明した。
羊脂に、ブナとヨークとニレの木の灰を混ぜて固めたというから、大いなる研究の末、作ったものであろう。
で、はじめは、ブロンドやシロの髪を赤く染めるために、これを用いていたが、ついでに、洗濯にも使えることがわかり、着物や身体を洗うようになった。
それから50年経って、AD180年ごろ、こんどは、ローマで、人尿から洗剤を作ることに成功した。
アンモニアの利用ということ。
このため、洗濯業者が争って、「糞尿くみとり権」を政府に申請し、ローマ政府は、課税とひきかえに、共同便所くみとり権を、洗濯業者に与えたという。
1590年ごろ、中国で、はじめて、固形石けんがつくられた。
山東省で、灰と獣脂からつくり、石けんを使っての洗濯が東洋でも始まった。
東洋が、西洋よりも、石けん利用で1500年遅れたということは、こん日としては考えられない。
つまり、そのあと、400年で、東洋での石けん利用が完全に一般化している。
いいかえると、これからの世界の言葉、宗教までが1つになっていくのは、思ったより、速いかも知れない。
石けんに戻ると、日本人は、洗剤を、よく使う国民であるが、石けんで、手を洗う、顔を洗うといった点で、習慣的に、いちじるしく遅れている。
カミソリの歴史は新しい。
1460年ごろ、ヨーロッパで、鋼(はがね)の刃をつけたものが、ひげそりに使われ始めた。
それまでは、ヒゲも、はさみで切っていた。
また、生涯、ひげを切ったことのない人も、いっぱい、いた。
安全カミソリは、1900年、アメリカ人ジレットが発明した。
これによって、家庭でも、ヒゲソリが容易となった。
BC80年ごろ、ギリシアのアテネで、理髪店が職業として確立したといわれる。
そのころ、アテネを中心として、ひげをそる習慣が広まった。
つまり、理髪は、ラテン人のためには、ヒゲからはじまった。