第32節 女子の和服礼服
【型1】留袖
- 留袖(とめそで)は、既婚者の大礼服*である。
第4章第9節【通解】「礼服の体系」を開きます。
- 元来、和服は、平安時代から、男女とも、振袖であった。
振袖は、美しいが、活動の邪魔にもなる。
で、まず、男子の袖を切り、ついで、女子の袖を切ってきた。
現代の留袖は、江戸時代からのもの。
- 宮中では、女子大礼服を袿袴(けいこ)と定めてきておられたが、大正12年(1923)、4月の観桜会から、留袖でもよいこととされて、こん日にいたる。
- 留袖には、黒留袖と色留袖があり、一般に、黒留袖を、正装とする。
- ただし、宮中では、黒紋付を用いられないので、宮中正式晩餐会などに出席する場合、色留袖を、用いる。
- いずれも、五つ紋の染めぬきで、表紋であること。
一越(ひとこし)ちりめん、小浜(おばま)ちりめんの無垢に、江戸褄(えどづま )模様を染め、上に金、銀などのししゅうや、箔摺(はくずり)をほどこし、その柄(がら)は、伝統的な、おめでたい柄が多い。
袖、肩には、模様がない。
【通解】留袖の下重ね
白羽二重の下着を、着物の下に重ねたもの。
最近は、着物と下着を重ねるとき、かさばるので、着物を比翼仕立てにしている。
この比翼仕立ては、襟と襟下、裾などのような着物から見える部分に、下重ねと同じように、仕立てた襟と裾を、着物に付けたものである。
したがって、胴と袖がない。
【通解】留袖の長襦袢
白羽二重、または、白綸子(しろりんず)を用いる。
撥襟(ばちえり)仕立てにするとよい。
【通解】半襟
半襟は、白の塩瀬、白羽二重を用いる。
襟芯を用いて、襟巾を広く折り、着付けする。
【通解】留袖の帯
糸錦・唐錦・金らん・つづれなどの丸帯・袋帯を、二重大鼓に、結ぶ。
【通解】留袖の帯揚げ
白紋綸子
【通解】留袖の帯締め
白羽二重丸ぐけの場合、祝い結びにする。
金銀平打ち、組紐が多く用いられる。
紅白の水引と同じに、向かって、右が金、左が銀に結ぶ。
【通解】留袖の小もの
- 肌襦袢
晒(さらし)、またはガーゼを用いる。
- 裾よけ
すべりがよいものを用いる。
- 足袋
白足袋。こはぜの数は、4枚くらいがよい。
- 腰ひも
長襦袢用2本、着物用2本、仮紐2本。
光淋ベルトなどを用いると、着くずれしない。
- 伊達じめ
長襦袢用1本、着物用1本。
博多織などでできているが、両端が、硬いものと、やわらかいものがある。
硬いものには、紐をつけるとよい。
また、改良された伸び縮みするものも、着くずれを防ぐ。
- 補正用に、晒(さらし)、ガーゼ、綿、タオルなど。
- 帯板
長めのもののほうがよい。
ゴムがついていて止めるのもある。
- 帯まくら
横長のものと、はまぐりなどの形があるが、自分の好みでよい。
帯まくらをガーゼでつつみ、前で結んだあと、帯揚げを、かけるとよい。
【通解】留袖の草履
草履は、金、銀、佐賀錦、布製のものがよい。
【通解】留袖の着付け
- 補正の必要
紋にしわをよせないために、とくに、補正が必要となる。
胸もと、背のくぼみに、綿花などを入れて、補正するとよい。
- 衣紋(えもん)*は、多めに抜く。
第4章31節「男子着付け」を開きます。
- 下重ねを着用し、下重ねの襟は、5mm ほど折って出す。
- 襟もとは、ゆったりと合わせる。
- 裾つぼまりに着る。
- 胸もとはふくよかに。
裾線は、キリッと仕上げることが、ポイントになる。
【型2】大振袖
- 袖丈が、1m10cm くらいで、着物全体に絵羽模様があり、五丈物で、引き返しまで、共布地を用い、その部分にも模様がついており、裾を引いて着用することもできる。
五つ紋・表紋。
素材は、ちりめん、一越ちりめん、紋りんず、黒地、白地のほか、色地があり、友禅染の絵羽、総模様が多い。
- 大振袖は、未婚者の大礼服であって、結婚式に、打掛を、用いないとき、高島田、角かくしをつけて、花嫁衣装として用いる。
戦前は、打掛け姿より、振袖姿のほうが、多く用いられていた。
また、洋髪で、お振袖を着用して、結婚式を行なっていた。
【通解】大振袖の下重ね
下重ねを用いるときは、白羽二重を用いる。
【通解】大振袖の帯
- 帯は、丸帯・袋帯を、福良雀、矢立、檜扇などに結ぶ。
- 糸錦、唐錦、金らん、つづれなどが多い。
通し柄の帯は、色々な形に、結ぶことが、やさしい。
【通解】大振袖の長襦袢
長襦袢は、緋ちりめんピンクなどを用いる。
【通解】大振袖の着付けの注意
- 衿もとは、つめ加減にする。
- 帯の位置は、高めに。
- おはしょりは、ふっくらと整える。
普段着(左腕で、帯の下から、人差指1本くらいの長さ)より、やや多めにする。
- 裾線は、後裾で、床すれすれの長さにきめる。
- すそつぼまりに着る。
【型3】中振袖
- 中振袖(ちゅうぶりそで)は、袖丈が90cm 内外で、四丈物でつくる。
八掛(はちかけ)を、表地の色に合わせ、別布で仕立てる。
- 紋の数も、一つ紋、または紋無しで、未婚者の中礼服であり、幅広く用いられる。
- 長襦袢は、綸子などでつくる。
- 襟は、白塩瀬を用いる。
- 取り合わせの良い伊達襟を用い、襟もとを引きしめると良い。
【通解】中振袖の着付け上の注意
- 大振袖の着付けに準ずる。
- 下重ねは、着用しないので、好みによって、伊達襟をつけると、華やかな装いとなる。
【型4】訪問着
- 訪問着は、中礼服。
用途は広い。未婚・既婚の別なく、着用できる。
- 袖の長さは、留袖と同じ。
三つ紋、または一つ紋をつける。
- 生地は、一越ちりめん、紋織り、ちりめんなどに、訪問着羽模様を染める。
留袖と、違い、肩や袖にも、模様を入れる。
仮仕立てをして、模様付けするので、全体が、1つの模様に、なっている。
- 裾まわしは、表色にあわせて別布をつける。
- 帯は、袋帯などを、二重大鼓に結ぶ。
【型5】花嫁衣裳
- 花嫁衣裳で、最も正式なのは「白無垢(しろむく)」である。
- 近年は、華やかにするために、打掛の色を白紅、若竹など、色物も使われる。
- 掛下(間着…あいだぎ)は、白を用いるが、白打掛のとき、掛下に、赤を用いることもある。
- 掛下帯には、中巾帯を用い、文庫結びにする。
帯締めは、白、または紅の丸ぐけを用いる。
- 拘帯(かかえおび)は、5cm 巾の白、または赤のもので、帯の下に締める。
- 長襦袢は、白羽二重、または縮緬(ちりめん)を用いる。
- 履物は、白、銀などの重ねの高い草履を用いる。
- 小物
- 髪飾りは、べっこうが正式である。
- つのかくしは、白の紗。
裏地は、紅絹(もみ)を使用する。
- はこせこ
懐紙などを入れておく。
現在は、ほとんど飾りである。
- 扇
白骨、金銀扇、白い房が付いている。
- 懐剣
金襴の袋に入れて、左胸下の帯にはさむ。
- 戦前までは、大振袖を花嫁衣装として、文金高島田に角かくしを用いた。
また、洋髪に羽飾りなどをつけた「モダンな花嫁さん」も、多かった。
- 貸衣裳屋の、袿袴(けいこ)姿、十二単衣などの花嫁衣裳や、色直しを勧める向きがあるが、花婿が、それに対応する衣冠束帯を用いない以上、花嫁だけ用いられるな。
- 色直しの意味は、白無垢姿の花嫁が、花婿から贈られた紋付などを「ありがたく、たまわる」という気持をあらわしたものである。
【通解】
(広衿の場合)
【型6】半襟のつけ方
- 三河もめんの襟芯を、襟幅寸法に切る。
長さは、半襟より左右1cm の程度長くする。
半襟で芯を包むように、周囲を縫いおさえる。
- 通し襟の場合
- 半襟の中心を、襦袢の背縫いの襟付けに合わせ、待針でとめる。
- 両肩明きまで、待針でとめる。
- 肩明きから、半襟の長さいっぱいを、襦袢の襟に、はすに持ち出し、待針でとめる。
- その間を、均等に、待針でうったあと、大針で縫う。
- 裏に返し、肩明きから肩明きまでを縫う。→完成
【型7】着付け
- 足袋
足袋は、半分に折り、指先から包むようにはく。
- 裾よけ
長襦袢の裾丈より2〜3cm 短く、裾つぼまりに着る。
- 肌襦袢
襟合わせは、ゆったりと。
衣紋は、長着により調節する。
- 体型にあわせた補正。
- 目的……体型を円筒形にするため。
- ポイント……補正とからだとの段をつけないようにする。
- タオルの場合
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a をもう一枚のタオルで包む。
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- 長襦袢
- 襟芯を入れる。
- 長襦袢を肩にかける。
- 半襟の先を、左右そろえる。
- 1本の腰紐で、胸元を整える。
- 2本目の腰紐で、すそつぼまりになるように整える。
- 長着
長着を肩にかける。
左右の襟を合わせる。
(そうすることにより、背中心が正しい位置にくる)
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襟先から10cm ほど上のところで襟付け線上を持つ。
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裾線をきめる。
普段着は、くるぶしのところ。
礼装は、床すれすれ。
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上前巾を、右腰骨を基準にして決める。
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下前を巻きこみ、褄先を少々上げる。
(礼装の場合は、多めに上げる)
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上前を重ね、右腕をおさえ、腰ひもを胴に巻き、結ぶ。
腰紐の位置は、腰骨の上あたり。
襟先が、3cm ぐらいかかるのがよい。
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身八つ口から手を入れ、上前、下前二枚のおはしょりをきれいに整える。
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共襟の先を合わせる。
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襟もとを合わせ、おはしょりを整える。
上前は、そのままおろす。
下前は、図のようにたたむと、すっきりする。
下前のおはしょりをたたんだ位置に紐をあて、胸もとに巻き、結ぶ。
しわを、脇によせる。
伊達〆をつける。
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- 帯
- 帯は、しめたとき、形づくられるほうを「たれ」、もう一方を「手」という。
- 結びかたによって、その帯の柄づけに適さないこともあるので、1度、ためし結びをしておくことが、大切である。
- 帯結び……二重大鼓(袋帯)
- 手先は、半分に折っておく。
- 手の長さは、前帯にかかるくらいにきめる。
(帯の柄づけによって、手の長さを調節する必要があるので、1度二巻きし、どのくらいその長さか、たしかめるとよい)
- 帯板は、一巻きし、前中央の帯の間に入れる。
- たれを上に、一結びする。
- まず、たれ先をきめて、つぎに、お大鼓だけ(結び目から約20cm 以上離れたところ)を、帯の柄づけに注意しながら、きめる。
帯枕をあて、前で結び、帯揚げをかける。
- 二重のまま、お大鼓の下を折り、手をなかに入れる。
- 帯結び……ふくら雀(袋帯を使用)
- 帯の長さは、後ろから肩におろし、前の帯が半分隠れる程度にする。
一巻きし、帯板を入れる。
- たれを上にして結ぶ。
- たれ先、約20cmのところに、タックをとる。
右肩におき、仮紐でおさえる。
- 仮紐から20cm 下のところに、同じようなタックをとる。
柄の位置をみて、結び目の上にあげ、仮紐でおさえる。
- 手は、たれのなかを通し、タックをとり、右と同じ分量をだす。
- ガーゼにくるんだ帯枕を背につけ、まえで結ぶ。
仮紐は、とり、帯揚げをつける。
- たれ先を持ちあげ、太鼓の形をつくる。
- 帯締めで、しめる。
- 帯揚げ
- 帯〆……祝い結び(白丸ぐけ)
右を上に交差する。
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一結びする。
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下の紐を「コ」の字にする。
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上から下の紐をわける。
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結ぶ。
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紐の先は、下から上にはねあげるようにはさむ。
(これは、末広がりの意味がある。)
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- 帯〆……水引き結び
第4章 美容と服装