第18節 男子靴
【参考】西洋男子靴の歴史的な流れ
- 中世、男子靴は、次の2種類であった。
戦闘、乗馬・川漁用 …… ブーツ
一般徒歩用 …………… パンプス(右図)
- ブーツは、皮・布製であり、パンプスは、木皮・布製であった。
- このパンプスとは、ひもがない。
こん日も、パンプスは、男女両用のものがある。
- 宮廷用として、武官はブーツのまま、文官はパンプスを用いてきた。
- 1700〜1800年代に入っても、軍服以外のフォーマル・ウェアの靴は、パンプスであった。
- さらにそこで、1900年代に入っても、テール・コート、モーニング・コート、タキシードに用いる靴はパンプスであった。
- 現代でも、ウェーターの靴は、宮内官の靴と同じくパンプスである。
- 元来、ひも結びの靴は、ひも結びのブーツの短くなったものである。
くるぶしの上まであるアングル・ブーツが一般化したのは1500年代で、始め、タウン・ウェアないしカジュアル・ウェアに用いられた。
この編上靴は1800年代からさらに短いものとなり、現代の短靴に至った。
この編上短靴は、パンプスにひもをつけたものとも言える。
現代ではテール・コート以下、すべてのフォーマル・ウェアでも用いている。
- 武官が、ブーツをフォーマル・ウェアに、用いることをやめたのは、1900年代に入ってからであって、 これは、馬に乗る代わりに、自動車に乗るように変わってきてからである。
【通解】短靴の分類
- 材質による靴の分類
- カーフ
生後3週間前後の子牛の皮
フォーマル用
- キップ
子牛と成牛の中間の牛の皮
ビジネス用
- スコッチグレーン
表面がデコボコしている
スポーツ用
- パテントレザー(別名 エナメル皮)
牛の皮にエナメルを塗ってあり、ピカピカに光っている。
フォーマル用
- スエード
子牛の皮を、やわらかく、なめしたもの
非公式のおしゃれ用
- バックスキン
鹿のなめし皮か、山羊のもみ皮
非公式のおしゃれ用
- 合成皮革
表面ツルツル
表面ザラザラ
表面エナメル
- その他
カンガルー …… カーフと同様にフォーマル用
わに …… 非公式のおしゃれ用
とかげ …… 非公式のおしゃれ用
- 色による分類
- 黒 …… フォーマル用、タウン・ウェア用
- 白 …… カジュアル用
- ブラウン …… カジュアル用、タウン・ウェア用
- その他各色 …… カジュアル用、タウン・ウェア用
- つまさきのカットの分類
- つまさき縫い飾りの分類
- 羽根の分類
- 羽根かざり
- はき口の高さの分類 (ブーツを別とする)
- かかとの高さ
- 縫い目
【参考】靴は午後3時に買え
「靴は午後3時に買え」ということばがある。
人間の足は、15時ごろ、もっとも、膨張するということ。
【型1】フォーマル・ウェアでの靴
フォーマル・ウェアのとき、つぎの範囲の靴を着用されよ。
・材質 |
…… |
「力ーフ」「キップ」「パテントレザー」「合成皮革で、表面のつるつるしたもの」「カンガルー」 |
・色 |
…… |
黒 |
・つまさきのカット |
…… |
「ポインテッド・トウ」 |
・つまさき縫い飾り |
…… |
「プレーントウ」「ストレート・チップ」 |
・羽根 |
…… |
「プラッチャー」「パルモラル」 |
・羽根かざり |
…… |
かざりのないもの |
・はき口の高さ |
…… |
「オクスフォード」「ハイライザー」 |
・縫い目 |
…… |
内縫い |
・エナメル |
…… |
葬儀・法事には不むきである |
【型2】タウン・ウェアでの靴
タウン・ウェアのとき、フォーマル・ウェア用の靴を、そのまま用いられてよい。
しかし、次の範囲の靴も用いられよ。
・材質 |
…… |
自由 |
・色 |
…… |
何色でもよいが一色であること |
・つまさきのカット |
…… |
超ラウンドでないこと |
・つまさき縫い飾り |
…… |
自由 |
・羽根 |
…… |
自由 |
・羽根かざり |
…… |
自由 |
・はき口の高さ |
…… |
自由 |
・縫い目 |
…… |
自由 |
・エナメル |
…… |
自由 |
【型3】ブーツについて
【参考】ブーツの種類
- ブーツには、ひも付、ひもなし、現代ではチャック付もある。
- 用途はすべてカジュアル用、または、スポーツ用である。
- 男女とも昔から、タウン・ウェア用とかカジュアル用に用いてきたが、1900年代に入って、男子は次第にカジュアル用にのみ、用いるようになった。
【参考】スリッポン
- スリッポンは、元来、部屋ばきであった。
かかとを取れば、スリッパである。
- 布製は、部屋はきおよびカジュアル用。
皮製はタウン・ウェア用として用いてよい。
- スリッポンを、フォーマル・ウェアで用いることはない。
【型4】
- 靴を、よく磨いておられよ。
- 次図の矢印の部分は、じゅうたんの上で、とくに目立つ部分であるから、光らせていることに努められよ。
【参考】靴の手入れ
- 靴を磨くとき、まず、ブラシでほこりを払い、良質のクリームを少しずつ、まんべんなく塗る。
- そのあと、布で、よくこする。
- 皮靴が、雨にぬれたときは、陰干しにすること。
このとき陽に当てると変色したり、変型したりすることがあるし、はなはだ、靴をいためる。
- で、型が変型するのを防ぐため、保存用の木型、または、シュー・ツリーを入れておくとよい。
- 日ごろ、着用しない靴は、靴箱の中に、よく磨いて入れて置く。
このとき、入れっぱなしにすると、カビを生じてくるので、たまに、靴箱から出して、通気をよくしたり、また、磨いたりすることが大切である。
- 1足の靴を毎日着用するのでなく、2足以上の靴を、交互に着用されよ。
これは、靴を長持ちさせる方法である。
また、1足の靴のみでは、毎日の汗が靴の中にたまり、それが乾燥するヒマを与えられないので、健康上よくない。
【型5】中側
男女とも、日本では、正式の場において、靴を脱がなければならないことがある。
このとき、脱いだ靴の中側が、汚れていないよう、こういうときのための靴を、別に所持しておられることが、たしなみである。
【型6】人前で靴を脱ぐな
人前で、けっして、靴を脱がれるな。
【説明】
欧米人は、この行為を、はなはだ、失礼と見なす。
また、女子として、人前で靴を脱ぐことが、特殊な職業の婦人であることの信号となることを知っておかれよ。
【型7】人前で、靴下、靴紐をさわるな
人前で、靴下や靴紐に触れられるな。
【型8】靴音をさせるな
- 会合、聴講などのとき、けっして、靴音をさせられるな。
- 歩くときに、靴がキューキュー鳴るようであれば、その靴を替えること。
(貧乏ゆすりをして、靴音をさせるのは、もってのほか)
とにかく、音について、ものすごく、神経が要る。
第4章 美容と服装