第4章 美容と服装 ◆第31節 男子和服礼服
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第31節 男子和服礼服

【通解】男子和服礼服
【通解】紋
【通解】紋の形態
【型1】男子和服大礼服の形
【型2】
【型3】男子和服小礼服の形
【型4】男子和服準礼服の形
【型5】喪服
【型6】男子着付け
【通解】半襟(はんえり)
【通解】長襦袢
【通解】下重ね
【通解】男もの長着の輪郭
【通解】羽織
【型7】羽織の紐の結び方
【通解】帯
【型8】文庫結び
【型9】男結び
【通解】袴
【型10】袴のひもの結び方

【通解】男子和服礼服
  1. 明治5年、太政官布告により、男子の正装は「黒羽二重、五つ紋付、羽織、袴」と定められ、今日にいたる。

  2. 第2次大戦後、官服としての大礼服*が廃止され、燕尾服の他に、この和服が大礼服として、認められるようになった。

  3. 洋服のテール・コート着用の場所に許されるもので、慶事には、白襟、白足袋、白鼻緒とする。
    敗戦直後の物資不足の時代であったから、宮中儀礼で、半襟(はんえり)を色物でもよいとされているが、白を上格とする。

  4. 和服には、昼夜の区別がなく、1日中、同じものを、着用してよい。

  5. 和服には、形の変化はないが、四季の変化に約束がある。
    春秋冬は、「袷(あわせ)」とし、裏をつけ、夏は、「単衣仕立て(ひとえじたて)」とし、夏用の布地、絽(ろ)とか、紗(しゃ)、麻、上布、などが用いられる。
    冬の大礼服として、「羽二重(はぶたえ)」、中礼服として、「お召し」、「無地」、「つむぎ無地」などがあり、小礼服として、「縞物」、「大島」などがある。
【通解】紋
  1. 紋は、平安時代、公卿が、牛車、また、袍(ほう)に好みの模様をつけたところから始まる。
    これは、装束紋といい、優雅な紋であった。

  2. 武家時代にはいり、戦場で、旗や馬具、陣幕などに目印としてつけ、敵味方の識別に役だてた。
    したがって、ここでは簡単な形となった。
    江戸時代に入り、町家の屋号、役者の紋所など、庶民に普及し、現代に至る。
【通解】紋の形態
  1. 大きさ(直径)……男子3.4〜3.8cm、女子2cm

  2. つける位置
    図:紋の位置
    五つ紋……背紋1、袖紋2、抱紋(だきもん)2
    三つ紋……背紋1、袖紋2
    一つ紋……背紋1

  3. 染め抜き紋とは
    紋の型を白く染め抜いたものである。

  4. (おもて)とは
    紋の部分を、白く染めぬいたものである。
    また、紋の他の表現法として、陰(かげ)紋がある。
    これは、紋の輪郭を白く染めぬいたもので、女性向きである。

  5. 五つ紋の染め抜き表紋が、正式な紋となる。

  6. あらわし方

名前 例図 特徴・使い方





白染めぬき 図:紋1 ・正式の紋。黒地などの地色に白く染めぬいたもの。
・白地の部分の多いものをひなた紋、または、おもて紋ともいう。
・図は「丸に梅鉢(うめばち)」
かげ紋 図:紋2 ・略式の紋。細い輪郭のものを「本かげ」、中くらいのものを「中かげ」という。
・主として女性や芸能人向き。
・図は「中かげ梅鉢」
輪なし 図:紋3 ・略式の紋。輪をのぞいた紋。
・やさしさがあるので女性向き。
・縫い紋にもする。
・図は「輪なしのかげ梅鉢」
地おとし 図:紋3 ・略式の紋。白地に黒く紋を置いたもの。
・いきな紋で、主として芸能人向き。
・縫い紋にもする。
・図は菱形の「地おとし花袋(はなびし )」
のぞき紋 図:紋3 ・略式の紋。輪郭の下の半分だけに紋を覗かせたもの。
・いきな紋で,女性や芸能人向き。
・図は「糸輪にのぞき梅鉢」



けし縫い 図:紋3 ・縫い紋は、染め紋よりくだけている。
・縫い方には、「しぼり縫い」「織り縫い」「けし縫い」、金銀など二色で縫う「ぼかし縫い」 などがある。
・図は「糸輪にのぞき木瓜(もっこう)」
     出典:学研「現代ホーム百科事典」

【型1】男子和服大礼服の形 図:大礼服
  1. 黒羽二重五つ紋付の羽織
    黒羽二重五つ紋付の着物
    紋は、染め抜きの表紋
    仙台平の細縞の袴(馬乗り袴)

  2. 下重ね(白羽二重)を着用する。

  3. 長襦袢(ながじゅばん)は白羽二重

  4. 半襟は白羽二重

  5. 帯は錦織の角帯

  6. 羽織紐は白の平打ち

  7. 足袋は白

  8. 履物は畳表、白鼻緒の草履

  9. 白扇を持つ
【型2】
  1. 下重ねは、灰色、その他色物の羽二重にし、長襦袢の半襟も、灰色、鉄色、茶色などの色物にする。

  2. 草履の鼻緒は、黒にする。

  3. 袴は、無地の仙台平にする。
【型3】男子和服小礼服の形
  1. お召しなどの無地の着物。一つ紋付。

  2. 上に、五つ紋の黒紋付羽織を着用する。

  3. 袴をはく。
【型4】男子和服準礼服の形
  1. 着物と羽織には、それぞれ紋をつけるが、五つ紋としない。

  2. また、羽二重でないお召しなどを用いる。
【型5】喪服

喪服の場合、羽織紐、半襟、草履の鼻緒を黒とする。
足袋は白を使用する。

【型6】男子着付け
  1. 足袋をはく。

  2. やせている場合、下腹部をタオルなどで補整する。
    (体格のよい人は、補正の必要がない)
    男子の着物は、「腹」で着る。
    また、帯を下腹部の位置で結ぶので、補整をしっかりさせないと、着くずれの原因となる。

  3. 長襦袢を着用

    図:衣紋
    1. ひもは、下腹部の位置に結ぶ。

    2. 衣紋(えもん)は、決して、抜かない。
      女子は衣紋を抜く。

    3. 背中には、しわを、つくらない。


  4. 長着(ながぎ)を着用(下重ねを着用の場合は、下重ねを長着に重ねること)
    紐(角帯より細いものを使用)を、帯の前に納めておくと、着くずれしない。

  5. 帯を結ぶ。

  6. 長着の背中心を少しゆるめると、礼をしたとき、窮屈でない。
【通解】半襟(はんえり)
  1. 半襟は、長襦袢に付ける。

  2. 男子は、趣味的装いの場合、ねずみ色の濃淡、鉄色、茶色の濃淡、紺などの色半襟を用いる。

  3. 半襟の素材は、一般に、塩瀬の織りを使用する。
    礼服には、白羽二重を使用する。
【通解】長襦袢
  1. 下重ねの下に着るのが、長襦袢である。

  2. 冬季といえども、長着(ふつう着物といっているもの)の素材は決まっている。
    そこで、防寒上、下着で暖をとる必要がある。
    たとえば、長襦袢の身頃(みごろ)に、ネルを使用するなど。
    この場合、すべてにネルを使用すると、裾さばきが悪くなったり、袖口からネルが見えたりするので、身頃(みごろ)にのみネルを使い、裾と袖口は絹とする。

  3. 男ものの長着は、無地が多いため、昔、長襦袢に、「見えないおしゃれ」が発達した。
    たとえば、背中に、虎や盃などの、男性的な絵柄を描くなど。
【通解】下重ね
  1. 着物の下に、着物と同型のものを着るのが「下重ね」である。

  2. 下重ねには、白羽二重を用いる。
【通解】男もの長着の輪郭
  1. 着物を長着(ながぎ)という。

  2. 袖口が広い。したがって、物の出し入れに便利である。

  3. 着るものの丈は、対丈(ついたけ)である。
    したがって、おはしょりは、不要である。
    図:長着の各部の名

  4. おはしょりの代わりに、内揚げがある。
    裾が、ほつれたとき、身長が高くなったとき、内揚げで調節できるようになっている。

  5. ふき(ふき)
    裾に、重みをつけるために、綿花を入れてある。

  6. 人形(にんぎょう)
    袖付は、女ものと比べ多い。
    女ものの「身八つ口」とよばれる部分を、人形という。
    身八つ口と比べ、開きが少ない。

  7. 胴裏
    女ものは、胴裏とすそまわしに分かれている。
    男ものは、通し裏である。


  8. 棒襟のみである。
【通解】羽織
  1. 羽織は、室町時代末期から、男子の着るものとして発達した。
    その語源、説は、いろいろあるが、「上からはおる」といったところらしい。

  2. 黒羽二重、五つ紋、染めぬき表紋が正式である。
【型7】羽織の紐の結び方
  1. 羽織の紐には、平打ちと丸組紐がある。
    白の平打ち紐が、正式とされているが、丸組紐でもよい。

  2. 平打ち
    図:結び方1


  3. 丸組み
    図:結び方2
【通解】帯
  1. 帯には、角帯(かくおび)と、兵児帯(へこおび)がある。

  2. 角帯には、錦織と、羽二重地紋織を仕立てたものと、博多などの単衣帯とがある。

  3. 兵児帯は、どれほど高価であっても、袴の下に用いない。

  4. 袴下には、角帯を使用して、「男結び」または「文庫結び」を結ぶ。
【型8】文庫結び
図:文庫結び1
1 手の長さは、左脇から約60cm とる。
手幅は半分に折っておく。
(輪を下側にする)
図:文庫結び2
2 手先は、肩先に出し、胴に2巻き。

図:文庫結び3
3 手を上に重ね、中央で結ぶ。
文庫結び4
4 幅を、衿の腰板の幅より狭くする。
数回巻く。
図:文庫結び5
5 巻いた「たれ先」を中央に当て、手先をおろす。
図:文庫結び6
6 手先で、たれを巻いて上に引きあげる。
図:文庫結び7
7 二巻きめは、帯の下側を通して、下に引く。
7 結び上がった帯は、右側*から、後ろにまわし、文庫を背中にもってゆく。
   
【説明】

 
* 「右側から」と定めたのは、左側を上に打ち合わせてあるので、左側からまわすと、着くずれの原因となるからである。

【型9】男結び
図:男結び1
1 左脇から 50cm くらいに手先をとおす。
図:男結び2
2 輪を下にして、2つ折りにする。
図:男結び3
3 二巻き、三巻きする。
図:男結び4
4 たれ先は、腰の位置で手をのばした長さに決める。
余った分は、内側に入れる。
図:男結び5
5 輪が上になるように降ろし、手を下にし、たれを上にして重ねる。
図:男結び6
6 たれ先を上にし、結ぶ。
図:男結び7
7 手先を上に折り曲げ、たれ先は、まっすぐ下に降ろす。
図:男結び8
8 手先を、たれ先で巻くように締める。
【通解】袴
  1. 袴には、馬乗袴(うまのりばかま)と、行燈袴(あんどんばかま)がある。
    礼服には、馬乗袴を用いる。
    馬乗袴には、まちがあり、ズボン式に、左右に分かれている。

  2. 袴地には、産地の名を採ったものが、いくつかある。その中でも、仙台平(せんだいひら)が多く用いられている。

  3. 礼服には、細い縞柄の仙台平を用いる。
【型10】袴のひもの結び方
図:袴のひも1
1 帯、すれすれの位置に袴をあてる。
図:袴のひも2
2 前紐を後ろにまわし帯の結び目の上で、右を上に交差させる。
しっかりしめる。
図:袴のひも3
3 紐を前に回し、帯の下の線に沿わせ、右脇で交差させる。
図:袴のひも4
4 下側の紐は、交差させた位置で折り返し、帯の下側に添わせるようにして後らに回わす。
図:袴のひも5
5 紐を、後ろ中央で、ちょう結びにする。
図:袴のひも6
6 腰板についている「へら」を帯の間にさし込み、腰板を、帯の結びめの上にのせる。
図:袴のひも7
7 後ろ紐を前にまわし、すでに巻いてある紐に添わせるようにして、ななめにおろす。左紐を上にして交差。
図:袴のひも8
8 左紐を、ひもをくぐらせて引く。
図:袴のひも9
9 結びめが、表側に出ないように一結び。
図:袴のひも10
10 紐の長さを調べ、短いほうの紐を、結びめの下を通して、上に出す。
図:袴のひも11
11 下の紐を、10cm のぐらいの長さにたたみ、結びめの上に置く。
図:袴のひも12
12 上紐で巻く。
図:袴のひも13
13 中央を数回まいてとめる。
図:袴のひも14
14 ひもは、上から下へとおす。
図:袴のひも15
15 下から上へくぐらせる。
図:袴のひも16
16 後ろでおさめる。

第4章 美容と服装
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