第5章 立居振舞 ◆第13節 歩行
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第13節 歩行

【型1】歩き出し
【型2】歩き
【参考】うしろ風
【型3】立ちどまり
【型4】あとずさり
【型5】最敬礼後退
【型7】走ってきて歩行に変わる。
【型8】急ぎ足
【型9】曲がるときの姿勢
【型10】回れ右の動作 (足さばき)

【型1】歩き出し

つまさきをあげ、床をすべるように、かかとを、前に、出す。
(このとき、重心もいっしょに、前に移動)

図:48
【型2】歩き
  1. 地面がジャリでないかぎり、足音を立てられるな。

  2. 身体が、上下、左右に揺れないように。

  3. ももで、歩かれよ。

  4. 前足が後足になっていくとき、一瞬だけ、膝の伸び切った形をつくり出されよ。

  5. 頭板 (あたまいた) を頭に載せて歩行練習されるとよい。
【参考】うしろ風
  1. その人物が、前進するとき、そのうしろに生ずるムードを、「うしろ風」 と呼んでみよう。

  2. 一流の人物というものは、どれほど、サマの悪い人でも、不思議と、うしろ風がきれいである。
    その原因が、心から出てくるのか、身のこなしから出てくるのか、わからない。

  3. とにかく、うしろ風を美しくすることにつき、たえず、意識されよ。
【型3】立ちどまり

うしろ足のつまさきを床にスルようにして、前足に、添えられよ。

図:49a
【型4】あとずさり
  1. 歩までとしたもの。

  2. うしろ踏み出し足の、かかとをあげ、つまさきをするようにして後方に引く。

  3. 上体をくずされないように。
【型5】最敬礼後退
  1. 相手の前で、最敬礼をしてから歩後退する。
    これには、2種類のやり方がある。

    1. 最敬礼をしながら歩後退し、頭を上げて去るやり方。
      これは、たいへん丁寧なやり方である。
      女性の場合は、スカートの両端を持ったまま後退する。
      図:49b
      これは、おもに、文官などが行なう。
      ホテルで言えば、ぺージ・キャプテン、ページ・ボーイ、ウェーターを除くホテルマンが行なう。
      その他、女性は全員、このやり方である。

    2. 最敬礼をして、頭を上げ、手横下のまま歩後退して去る。
      帽子を持っているときは、胸にあてながら歩後退する。
      図:50
      これは、おもに、武官が行なう。
      ホテルで言えば、ページ・キャプテン以下、ウェーターが行なう。
      黒服の場合は、どちらのやり方をしてもよい。
      その店によって決めよ。

  2. 去り方

    うしろ退出横退出がある。

  3. 運続動作(足さばき)

    1. うしろ退出
      図:51d 図:51a 図:51b


    2. 横退出
      右退出のとき、右足から下がればよい。
図:51c
【説明】

  最敬礼をして歩後退する動作は、元来、中世で、次のような場合に行われた。
  1. 王様の前に出てご挨拶をするとき、これは、大臣、外国からの使者、旅芸人などが行なう。

  2. 人民が、訴訟を申し立て、帰るとき。

  3. 役者が、舞台の正面で観客に挨拶をするとき。

  4. ホテルマンが、広い所でお客様の前に来て、何かをつげて戻るとき。
    おもに、ホテルのロビー、メーン・ダイニングにおいて、または、客室に物を持って行き、下がるときに用いる。

  5. その他、広い所で、偉い方に自分1人が礼をして去るようなとき。

だいたい、1300年以前は、歩ではなく、見えなくなるまであとずさりしていった。
古代ギリシア、ローマ、エジプトにおいては、そのように行われていたようである。
しかし、ルネッサンスのころから、その型は変化してきた。
1400年代から、よろいを脱ぐようになり、はさみの進歩が相まって、幅の広い布が作られるようになった。
それによって、次第に女性のドレスが大きくなり、後退という動作が、困難になった。
そして、幾何学の進歩により、後退の歩数に限度を与え、歩とした。
それで、うしろまで下がったことと同じことを意味する約束になったのである。

2 の方法は、よろいかぶとを脱ぎ、ラシャの上着を着用するようになって以降の風習である。

【型6】走行 図:53
  1. 肘は90度にまげる。

  2. 握りこぶしを軽く握る。

  3. リズミカルに、美しく。

  4. ひとりで走るときも、テレられるな。




【型7】走ってきて歩行に変わる。

歩行に移った最初の歩目から、ひざを、まっすぐに伸ばす。

【型8】急ぎ足
  1. 床に直線を引き、その線上を歩く練習をせよ。

  2. 腰から前に出るように進まれよ。

  3. 慣れてきたならば、障害物を置いて、または、複数の人に立ってもらい、体のかわし方の練習をされよ。

  4. この練習によって、自然な急ぎ足が身につく。
【型9】曲がるときの姿勢

歩いてきて曲がるとき、姿勢はそのままで、首を心持ち下に下げられよ。
決して、首などを素早く動かされるな。

【型10】回れ右の動作 (足さばき)
図:54a
      動作は流れるように

第1章 立居振舞
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