第6章 和式作法 ◆第14節 本膳料理の体系
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第14節 本膳料理の体系

【通解】
【型1】一汁三菜
【型2】一汁五菜
【型3】二汁五菜
【型4】三汁七菜


【通解】
  1. 本膳料理の基礎は、一汁三菜にある。
    「菜(さい)」は「な」のことであり、副食物のことを指す。

  2. 一汁三菜の内容は、飯、汁、香の物、なます、煮物、焼物であり、飯と香の物は、数えない。

  3. こうして見ると、料理の品数が「4品」ということになる。
    で、 「4」 という文字について、これが「死」と同じ音であることから忌み嫌い、一汁三菜という分割した呼び方にしている。

  4. また、菜の数は、かならず、奇数である。
    このことは、日本において、奇数を陽とし、偶数を陰とする思想があり、奇数をめでたいものとすることによる。
    一汁三菜、一汁五菜、二汁五菜、三汁七菜など、三汁十五菜まであるが、一汁四菜(偶数の菜)はない。

  5. 膳は、高足(たかあし)膳を用いる。高さ 40cm。

  6. 膳の配置は、かならず、まず、本膳 (一番目に出す膳) を膝前に置き、二の膳 (二番目に出す膳) を右側に置き、三の膳 (三番目に出す膳) を左側に置く。

  7. 昔は、すでに盛りつけた料理を、目八分目の高さにささげて、客前に出していた。

  8. それぞれの膳には、何をどこに置くかという約束がある。
    これを、「膳組み」と呼ぶ。
    本膳料理という名称は、室町時代に始まったのであるが、現在、明治・大正時代に完成された膳組みを用いている。

  9. で、膳組みは、江戸前期のころ、一の膳、二の膳、三の膳として分けていたが、天保のころ、まず、最初に出す膳を、「一」と書かずに「本膳」と書くようになった。

  10. さて、二番目に出す膳は、本膳より小型である。
    で、この膳のとき、「汁」のない場合がある。
    これを 「引落(ひきおとし)」 と呼んで、正確には、二番目に出す膳ではあるが、 「二の膳」 と呼ばない。
    引落の配置は、二の膳と同じであるが、高さは、二の膳よりも低い。

  11. つまり、「二の汁」がつく膳が「二の膳」であるということ。

  12. これに、「焼物」が別の膳でつく。
    「焼物膳」という。脇膳の1つ。

  13. さて、酒について。
    酒は、元来、「飯」を食べ終わってから飲むもので、最後に出された。
    「吸物」が出されると、「酒」が出ることになっていた。
    これを「吸物膳」と呼ぶ。

  14. で、酒を出す合図が、「吸物」であること。

  15. が、のちに、酒は飯を食べ終わってからでなく、二の膳に二の汁 (すまし汁) から盃事に移るようになった。

  16. 会席料理になると、はじめから、箸の上に、盃を載せている。

  17. で、つゆとして、「飯」につくのは「汁」であり、「酒」につくのは 「吸物」であるということを知っておかれよ。

  18. 最後、菓子に、濃茶と薄茶、あるいは、そのどちらかが出る。

    1. 濃茶
      抹茶の量を薄茶より多くし、泡立てず、茶筅(ちゃせん)で濃くぼってりと練る。
      一碗を数人で飲み回す。

    2. 薄茶
      抹茶に湯をさし、茶筅で泡立てる。濃茶に比べ味わいは、淡白である。

    3. 抹茶
      うすでひいて粉末にした茶。煎茶は、煎じ汁にするが、抹茶は、茶の葉を粉末にしてすべて飲んでしまう。


  19. 本膳料理でも、食前に、茶の菓子(干菓子、蒸し菓子)がだされ、食後には、一汁三菜であれば、煎茶か抹茶に菓子。
    二汁五菜であれば、濃茶に蒸し菓子、さらに、薄茶に干菓子がだされる。

    1. 干菓子(ひがし)
      乾いた菓子をいう。打ち物(らくがん類)、掛物(こんペいとう類)、焼物(煎餅)がある。原則として薄茶のときに出す。
【型1】一汁三菜

本膳 …… なます、汁、平、飯、香の物、焼物、取肴、吸物、酒、菓子、薄茶

【説明】
  1. 「なます」 …… 鱠または膾と書き、魚を使ったときと、野菜を主に使ったときを区別する。
    和(あ)え物か酢物で、小鉢か小丼に盛る。

  2. 「平」(ひら)…… 煮物のこと。海、山、里のものを5種類ほど、取り合わせ、平たい蓋付きの椀に盛る。

  3. 「取肴」(とりざかな)…… 口取肴で、はしからとる(小口から取る)肴ということであり、酒の「肴」のことをいう。

    肴とは、平安時代から使われている言葉。
    さて、「菜」(な)は、副食物のことを指す。
    で、酒に添える料理(酒に添える副菜)を「酒のな」と呼び、これが、なまって 「酒な」となり、「肴」となった。
    海の物、野の物、山の物など、3〜5品を盛り、一品ごとに、甘いもの、酸味のもの、辛味のものなどにして、重複をさけている。
    向こうを高く、手前を低く、大きめの器に盛る。
【参考】

一汁三菜以上を饗応に用いる料理とし、不祝儀のときは、本膳だけが多い。
本膳料理は、総て、高足膳であるが、一汁二菜、一汁一菜では、足のある膳を用いない。

(膳組) 237
【型2】一汁五菜

本膳……なます、汁、坪、飯、香の物、焼物
      平、猪口、吸物、台引、酒、菓子、薄茶

【説明】
  1. 坪 …… 二番目の膳につける「平」と区別して、本膳につけられる煮物のことを、「坪」という。
    野菜の煮物やしんじょ(魚肉のすりつぶしの蒸物)のあんかけを、蓋付きの深い器、すなわち、坪(坪は、壷とも書き、壷形の器)に盛りつけて出す。

  2. 猪口(ちょく)…… 器の名称で、イノシシの口に似ているところから、猪口と呼ぶ。
    飲酒用の杯や付け醤油の容器をさす場合と、酢の物、和え物など、小さな器に盛る料理をさす場合がある。

  3. 台引 …… 台引といって口取(蒲鉾、金とん、羊かん、伊達巻きなど) がつく。
    現在は、酒が主体になったため、口取の内容も変化し、枝豆、あわびの蒸し焼きなどにかわってきている。
【参考】

一汁五菜から煮物を除いてしまったとき、一汁四菜といわないで一汁共五菜という。

(膳組) 238a
【型3】二汁五菜

本膳 ……… なます、汁、坪、飯、香の物、焼物
二の膳 …… 平、汁、猪口、
         吸物、台引、酒、菓子、濃茶、後菓子、薄茶

【参考】

一汁五菜の献立に、「二の汁」を加えて、「二の膳」にしたものである。現在、最も、多く用いられている膳組である。

(膳組) 238b
【型4】三汁七菜

本膳………なます、汁、坪、飯、香の物
二の膳……平、汁、猪口
三の膳……椀、汁、刺身
焼物膳、引き物膳

  1. 「本膳」の「一の汁」は、味噌仕立て。「二の膳」の「二の汁」は、多くが、すまし汁仕立て。
    「三の膳」の「三の汁」は潮(うしお)仕立てである。

  2. 潮仕立ては、すましの一種である。煮だし汁を用いず、魚貝類を、水から入れて煮出し、塩味だけで調味したものである。
    もとは、海水で仕立てたといわれ、鯛の潮仕立ては、最高とされている。

  3. 椀……椀盛りの煮物汁のこと。

  4. 「焼物膳」は、小鯛の尾頭付きの塩焼きが普通であり、これを、 「与の膳」 と称する者もいる。
    四(死)の数を嫌い、「四の膳」とはいわず、「与の膳」といったわけである。

  5. 「引き物膳」は、口取が盛られた、おみやげ用の膳で、「台引」ともいう。
    「五の膳」と称する者もいる。

  6. 「焼物膳」、「引き物膳」は、箸をつけないで、折り詰めにして持ち帰る。
    こん日の結婚披露宴の引出物は、この形を変えたものである。

  7. 儀式のときは、普通、天婦羅などの揚げ物を出さない。
    が、揚げ物を出すときは、焼物のかわりに出される。

    (膳組) 239

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