第8章 特定の場所での作法◆第3節 カウンター作法
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第3節 カウンター作法

【通解】カウンターはイスなしが原則
【型1】カウンターで、前に客のいないとき
【型2】カウンターで、先客のあるとき
【型3】2番目の人の辛抱
【型4】カウンター前で列をつくるとき
【型5】割り込む者に対して
【型6】カウンターで文字を書くときの「どうぞ」
【型7】カウンターに寄りかかるな
【型8】カウンターを去るとき



【通解】カウンターはイスなしが原則
  1. バーのカウンターには、元来、イスがなかった。
    バーでなくとも、カウンターは、イスなしが原則である。

  2. イスなしのカウンターは、どこにでもある。
    鉄道の改札口に。ホテルのフロントに。学校の教務の窓口に。

  3. この節では、イスなしのカウンターでの客としての作法を述べる。
【型1】カウンターで、前に客のいないとき
  1. カウンターに行ったとき、係の人が仕事中であるならば、係の人が気付くまで、黙って待っておられよ。
    けっして、声をかけられないこと。

  2. こうして、係の人と目が合ったならば、ニコニコと微笑されよ。

  3. しかし、緊急の場合もある。そういうときは、「恐れいります」(May I ask you?)と述べられよ。
【説明】

日本人が、世界中で嫌われている、ひとつに、カウンターに行くや、いきなり、話しかけるということ。自己本位であると評されている。

【型2】カウンターで、先客のあるとき
  1. 行列を造るほどになっていないが、前に客があって、カウンター内の係の人と話をしているとき、かならず、その客のうしろに立たれよ。

  2. カウンターは、横に広々としているし、他の係員もいることであるからと、カウンターの空いているところに飛び込むや、相手にしてもらえなくなる。
【説明】
  1. 欧米には、こういう不文律のあることを日本人は知らない。で、空いているところに飛び込むや、係員は、この客を、「干し」てしまう。こちらが、話しかけても、返事をしてもらえない。これを、日本人は、人種的差別待遇と誤解する。

  2. ところが、こちらが、前の人のうしろに並んでいるや、手のあいている係員が来たとき、この係員のほうから、こちらに call をかけてくれるものである。
    こちらも、前の人のうしろにいながら、手を挙げて、サインすれば、その係員がボンヤリしていても、こちらに call をかけてくれる。
【型3】2番目の人の辛抱
  1. 前の人が、係員と会話ののち、何か、そこで、文字を書き始めたものとする。日本であると、このとき、係員は、つぎの客のほうに、call をかけてくれるものであるが、諸外国では、概して、いま文字を書いている客が、文字を書き上げるまで、その係員は、つぎの客を相手としない。
    そこで、つぎの客たる者、じっと、待っていなければならない。

  2. もし、つぎの客が、係員に話しかけても、係員は、返事をしないであろう。
【型4】カウンター前で列をつくるとき
  1. 縦1列になられよ。(前の人との間隔は、1m以内)
    特別の指示があるとき、それに従われること。
    通路が狭いとき、通行の邪魔にならないことを第1に考えること。

  2. 割り込みを、けっして、なされるな。

  3. 身替りの順番取りは、卑劣な行為である。
【型5】割り込む者に対して
  1. こちらが、正当に、行列をつくっているところに、割り込んで来た者、または、さっさとカウンターの空いているところに、身体を放り込んで来た者に対しては、「こちらが、順番です」(This is the range)というのが、作法に適している。

  2. そのとき、相手が、「すみません。ちょっと、緊急で」(Perdon me! this is an urgent necessity)と申し立てたならば、許されよ。 

  3. また、相手が、単なる、ズルイ存在であったならば、係員の善処に任されよ。ほんとうに、緊急の用事でもないのに、係員が、ズルイ存在を優先するならば、これは、係員とこの暴漢がグルであるか、それとも、係員が、不意な暴力に、屈するダラシない存在であるかである。
【説明】
  1. 欧米人も、ずるいことを、いっぱい、する。そうして、見張っている者がいれば、それをしない。が、しばしば、そのかげに、わけがある。

  2. イギリスのユース・ホステルの食堂で日本人たちが30人も行列をつくって待っていた。そこに、イギリス人が1人やって来て、行列のうしろについた。日本人たちは、それを、放っておいた。

  3. その日本人団体が、西ドイツに行ったところ、ドイツ人たちが、やっぱり、30人ほど、先に行列をつくっていた。
    このドイツ人たちは、相談し合うと、ドイツ人1人ずつのあいだに、日本人を1人ずつ入れてくれた。同じく、1人いたイギリス人をも、これに加えた。

  4. 日本人団体は、チェコに行った。そこで、また、日本人だけ、30人ほど並んでいた。そこに、イギリス人1名が来た。何気ない顔をして、日本人の先頭に割り込んで、さっさと、自分用の食事を、もらい受けて、行ってしまった。日本人たちは唖然とした。

  5. 日本人たちは、自分たちが、行列をつくったとき、他国人をあいだにはめこむ不文律を知らなかったのである。しかし、日本人に、かかっては、かなわないと見ると、イギリス人も平気で、秩序を破る。わたくしは、複雑な気持ちがした。わたくしは、その日本人たちの団長であったのである。断腸のおもいがした。
【型6】カウンターで文字を書くときの「どうぞ」
  1. カウンターで、自分の荷物を出したり、文字を書いたりするとき、うしろに待っている人のことを考え、黙って、左横にのき、席を譲られよ。

  2. ただし、このとき、「どうぞ」という言葉を添えられないように。
    で、1度「どうぞ」と言ったならば、こちらは、この列の1番うしろに移動しなければならない。
【説明】

ここで、「どうぞ」という言葉は、「席を譲るといった」と解釈する、国際習慣としての約束がある。

【型7】カウンターに寄りかかるな
  1. けっして、カウンターに寄りかかられるな。

  2. ここにおいて、腕、肱などは、カウンターに置いてもよいが、体重を、いささかもかけないこと。

  3. 文字を書くときの姿勢を正しいものとされよ。背すじをのばし、首だけ下を向けて書くということ。
【説明】

ここも、日本人の特性として、カウンターに寄りかかるということがある。

【型8】カウンターを去るとき

カウンターで、係員との話が終わったならば、かならず、「ありがとうございました」とことばを添えられよ。

【説明】

この点も、現代日本人の不作法さということで、世界的に嫌われ、軽べつされている。


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