第1章 論文の書き方
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第6節 プロ・ライター・レベル


  1. この文書心得は、細かい。

  2. 諸君が、本校卒業後、職場などで書かれる文書は、この文書心得で規定しているほど、細かいものにされなくてよい。

  3. つまり、この中には、「日本語として、必ず、守らなければならない」条項と、「それほどでもない」条項を含む。

  4. この2種類の条項の区別は、諸君が、この中に、首をつっこまれたとき、ご自分で、はっきり、わかってこられよう。

  5. が、いま、諸君が学生であられるあいだ、この文書心得が求める細かさに、正面から、きびしく、つきあっておきたまえ。
    それは、わたくしなりの体験から、そう申し上げるのである。
    わたくしは、大学生のとき、みずからの文書づくりに、あまり、細かいものを持つことを嫌った。
    わたくしもまた、窮屈なことの嫌いな点では、人後に落ちなかった。
    そのわたくしは、大学を出た直後、あることから、文書づくりの細かさの枠の中に、強制的に追い込まれた。
    その期間は、せいぜい1年間であったが、その細かさに耐えかねたことは、いまも、記憶に新たである。
    しかし、このとき以来、わたくしは、ものを書くということに、おそれを持たなくなった。
    現在、わたくしが、文筆家として、有名であるわけでない。
    が、わたくしが、書くことについて、すこしも、おそれを持たないでいられるのは、「あの1年間」のおかげである。

  6. わたくしは、諸君のために考えてみた。
    この文書心得を「アマチュアとしても、これだけは守らなければならない」範囲に押さえようかと。
    ところが、そうすると、諸君は、新聞・雑誌のライターとして、尻ごみされるレベルに止まってしまわれよう。
    で、思い切って、「プロ・ライターとして守る」条項に踏み切っている次第である。

  7. それから、もう1つ、ここで、ご了解を得て書きたいことがある。

  8. 諸君が、毎週、論文を書かれたとき、わたくしは、それを添削申し上げる。
    そのとき、諸君が、わたくしとの間の一定の約束を守った書き方をして下さると、わたくしは、その添削を行ないやすい。
    その「約束事項」を、この文書心得の中に含んでいるということ。

  9. で、そういう項目の番号の前には、 印を付けてある。

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