第1章 論文の書き方
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第45節 概念の明確化を


  1. 本講での提出論文では、ブランドと一般名詞の混同に注意されよ。(△2)

    一般名詞 ブランド
    しょう油 キッコーマン
    グルタミン酸ソーダ 味の素
    ウイスキー サントリー
    乗用車 トヨタ
    オート・キャンプ場 モビレージ
    メラミン樹脂板 デコラ

  2. 前記」と「上記」の使いわけをはっきりされよ。
    前記」とは、そこに述べている文章の表題より前に書かれていることを指すときのことばで、「上記」とは、同一表題のなかで、いま書いている部分より前の部分にあることを指すときのことばである。
    そこで、本講の提出論文の中に、「前記」ということばの出てくるはずはない。(△2)

  3. 後記」と「下記」についても、同じである。

  4. 以上」「以下」などのことばを、正確に用いられよ。(△5)

    (例) 1〜5とあるとき
    3以上 1 2 "3 4 5"
    3以下 "1 2 3" 4 5
    3未満 "1 2" 3 4 5
    3を超えるもの 1 2 3 "4 5"
    2から4まで 1 "2 3 4" 5
    3以外 "1 2" 3 "4 5"

  5. つぎの接続詞の用法の区別をはっきりされよ。(△2)

    {()+()}+(
     ……およびならびに

    {()∩()}∩(
     ……またはもしくはまたはあるいはまたは

     
    and および ならびに
    or または もしくは あるいは

    and または or の意味の接続詞は、前の表における小のほうから順番に使うこと。

  6. より」という後置詞には、英語での more の意味と、from の意味とがある。
    文中では、「より」は more のみに用い、from のためには、「から」を用いられよ。(△2)

  7. 元来、約束された定義のある用語を、世間で俗用していようと、諸君は俗用されないように。(△2)
    (例1) 内包
    論理学上、約束されたことばで、「外延」と対語である。
    たとえば、「東京」という概念をイメージするとき、「ああ、日本の中の首都部分さ」と思えば、これは、「東京」の外延的把握となり、「ここには、23区と三多摩と伊豆七島と小笠原諸島があるさ」と思えば、これは、「東京」の内包的把握となる。
    そこで、「内包」ということばは、「包含」ということばに似ているけれども、あくまで、「外延」と並べて使わなければならない約束を持っている。
    (例2) 自体
    哲学上、約束されたことばで、現象面の背後にかくれている本質ということ。
    ふつうに、「そのもの」を表わすときは「自身」の語を使われ、「自体」の語を乱用されないように。
    (例3) 契機
    ヘーゲルの用法とフッセルの用法とで、いくばく、差があるが、要するに、1つの状態から次の状態に移行して行くときの各段階の1コマずつを指すために作ったことばである。
    そこで、「動機」ということばに似ているが、別のもの。
    たとえば、「オイル・ショックが、1つの動機となって、国際経済の組み合わせが変わった」と言うべきときに、「契機」ということばは使えない。
    (例4) 連関
    数学上、マトリクスの表頭と表側の関係を表わすときにのみ、使うことばで、「関連」という一般用語と異なる。
    たとえば、「所得の増大に関連して、観光支出も増大している」というべきとき、「連関」ということばは使えない。

  8. 一所懸命」がただしく、「一生懸命」はただしくない俗用である。(△2)
    このことばは、1箇所の領地を守るのに、命を懸けるという意味から作られたものである。
    一生涯、命がけで働くという意味でない。

  9. 顧客」とは、「とくい客」であって、客一般のなかの一部分である。
    客と顧客を区別して表現されよ。(△2)

  10. 価格」と「価額」を、はっきり、使い分けられよ。(△2)
    「価格」……単価を意味する。
    「価額」……単価に数量を乗じたときの値段を意味する。
    または、2種類以上の商品をまとめて取引したときの、その値段の合計をいう。

  11. 同音異語で、混同のうれいのない場合は少ない。
    (例)
    観光 慣行 貫行 喊口 官行 官公 刊行 勘考 感光 敢行

  12. 同音異語では音読みのときが問題になる。
    まず、その音読みで、教育漢字にないときは、仮名を使ってよい。
    (例)
    喊口 → かん口

  13. けれども、そうしてみて、かえって意味のわからなくなる恐れのあるときは、別のことばを捜してきて使われよ。
    (例)
    喊口 → 口つぐみ

  14. その別のことばが、うまく見つからないとき、初めて、教育漢字でない漢字を使われよ。
    (例)
    口つぐみ → 喊口

  15. 混同のうれいのある同音異語に注意されよ。(△2)
    (例)
    上げる …… 下から上に移動する
    揚げる …… 紐つきで、上にあげる
    挙げる …… 手に持って、上にあげる
    あげる …… 与えるの敬称
         
    意思 …… つもり
    意志 …… 貫き行なう力
         
    返る …… そりかえる
    帰る …… もとに戻る
         
    超える …… 上に超過する
    越える …… 横に跨ぐ
         
    対象 …… OBJECT(目的とするもの)
    対称 …… SYMMETRICAL(名前で相対するもの)
    対照 …… COMPARATIVE(比較するもの)
         
    体制 …… 制度の体系
    態勢 …… 一団の構え
         
    着く …… 身に着く
    札幌に着く
    付く …… 一般的なつく
         
    造る …… 手で持ち上げられないくらい大きくて、固い物
    作る …… 造を使う以外の場合のつくる
         
    務める …… 義務を果たす
    努める …… 努力する
         
    取る …… 単純なとる(部屋に食事を取る)
    採る …… えらびとる(方法を採る)
    執る …… 資任をとる
    獲る …… 生物をとる
    摂る …… 吸収する(食事を摂る)(栄養を摂る)
    徴る …… 徴発する
    盗る …… ぬすむ
    とる …… その他のとる
         
    伸びる …… 成長する
    延びる …… 延長する
         
    測る …… 時間、空間、温度、含有量等をしらべる
    計る …… 予定を、数字、図面であらわす
    図る …… 方針をたてる
         
    早い …… EARLY(ある時点より前にある場合)
    速い …… SPEADY(速度が速い)
         
    保証 …… 証明する
    保障 …… 困らないようにする
         
    持って …… 手に持って
    もって …… 昔の書きかたで「以て」と書いたもの WITH
         
    …… 物品(物理的)
    ……
    もの …… ものごと(抽象的)
         
    由る …… 原因とする
    依る
    拠る
    ……
    ……
    たよる
    寄る …… 立ち寄る
         
    渡る …… 空間的
    亘る …… 時間的

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